AI関連で使う数学を理解するには、大学レベルの線形代数、微分積分、確率統計が必要です。それ以上の大学レベルの数学も特定分野では必要になりますが、基本的には不要で、線形代数、微分積分、確率統計を理解していればほとんどの機械学習、Deep Learning、AI関連の内容は理解出来ます。
そのために中学レベルの数学から何をやっていけばいいか、1年間で大学レベルの数学まで独習するルートを紹介します。1日2時間すべて基本は参考書などを使った独学で学習すると推定したロードマップです。
主に社会人向けの内容でこれから数学を再学習しようと思った社会人でも現実的なルートになります。もしもあなたが、中学生、高校生の場合でも、やる気がある新中学3年生なら春から学習を開始して、中学卒業までに大学レベルのAI関連数学を学習できるでしょう。
もちろん、本人がどの分野をどの程度理解しているかによって、分野を省略、期間の短縮も可能ですし、どこかでつまずいた場合は期間が伸びる場合もあります。
AI数学は30時間では無理|独学で必要な学習時間
なお、東京大学の松尾・岩澤研究室のロードマップでは中学校からの復習から始まる数学の勉強の想定時間は30時間となっています。
これは、例えば大学受験で数学を選択し何とか合格はしたが、あまり得意ではない大学の新入学生が必死でやってできるかわからないレベルの学習速度です。数学の何かが欠けた状態で、主要な項目のみ30時間で学習しても、AI関連の数学で必要になる概念は理解出来ず、イマイチ不明な状態が続くのではと思います。
つまり、既にある程度、線形代数、微分積分、統計学などを授業でやって、高校レベルの一般的な数学の問題などはすぐに解けるような、研究室に入ろうとしているような人、既に基礎を以前学習済みでリハビリとして関連知識を思い出すことを想定している学習時間だと思います。
また、AI関連のプログラミング、AIを活用したデータ活用などを実際にやらないが、AI関連がどう動いているのかの概要を知っている状態にしたい人向けにしているのかもしれません。そのような、とりあえず概要を知る時間としては有効かもしれません。
ここでは、主に四則演算くらいなら再学習しないでもできるが、分数の計算、1次方程式などの計算を10年以上していない一般の社会人むけです。実際に何らかの形で意味を理解してAIを活用できる状態になることを想定しています。
その手の数学はすっかり忘れた、参考書などの「この方程式を解け」みたいな問題を見て、「解けって言われても何をやったらいいのやら」状態の人、分数の計算問題を見て「えーっとどうやるんだったけかな」レベルでも、現実的にできるレベルの学習時間となっています。
1日2時間を1年ほど続けるので、700時間は学習することを前提にしています。
もちろん、本人が中学数学は既に完璧とか、どこかの分野はすぐ終わるならその部分は省略できるし、どこかでつまづいたらもっと時間がかかることもあります。
学習のポイント
短期間で数学を理解するためには、例えば受験数学の難問を解けるまで学習をする必要は無いです。必要なのは教科書に書いてある基本的な内容を理解することです。
内容の理解とは公式に当てはめて計算できるということではなく、例えば微分とは何かを理解している事です。
高速に正しく計算することはコンピュータにやらせればよく、数学でどう解決すればいいか、この問題はどう解けばいいかをわかっていることが重要です。
複雑な式はコンピュータにやらせればいいですが、単純な式の解き方は知っている、実際にザックリこのくらいの数値になるくらいはパッと見てわかるくらいの計算力は必要です。
一次方程式の変形、2×2行列の掛け算が手計算でできるくらいなどです。もちろん、現時点でこれが何の事やらさっぱりわからなくても問題ないです。
AI関連では数学でもあまり使わない項目はあるので、そういった内容は簡単な理解にとどめることが重要です。各分野も難問を解けることをめざすような、深掘りしすぎないことが重要です。ここで言及していない項目は学習する必要は無いですが、数学の基礎としてはある程度目を通しておくことに問題は無いです。
目的はAI関連の数学を理解する事なので、例えば受験合格レベルを目指すことは無駄になる場合があります。教科書の基本的な例題を解ければ、その分野は終わらせて次に進んでいくことが重要です。
その後、各分野でつまづいたら、また戻ってくればいいだけです。
一通り学習が終わった直後は、基礎的な内容を理解した段階でしかない事を忘れてはいけません。この通り学習したら、AI関連の内容が完璧に理解できるわけではありません。その後、継続して実際にAI関連の内容を続けていけば理解はより深まっていくでしょう。
AI数学のための中学レベル数学
正負の数、文字式の計算、一次方程式、一次関数、連立方程式をできるようにします。
おおむね1ヶ月から2ヶ月の学習を想定します。
できるかどうかを中学生向けの総まとめドリルなどで解けるか確認してみましょう。図形問題は基本的に不要です。もちろん、分数の計算などを忘れていたら、軽く小学生向けの内容を復習することも重要です。
中学生レベルの数学の内容を一通り学習したい場合は、参考書などを使っても問題ないです。基本的には前述の方程式、関数などを解けるようになっていれば次に進みます。
重要なのは計算ができることでは無く、なぜ分数の割り算で分子と分母をひっくり返すのかのような数学の考え方の基本です。
この後も重要になりますが、図形の証明など、AI関連で使わない内容を学習しすぎないことが重要です。
とはいえ、中学数学くらいの内容は一通り学習し直して損することはないでしょう。
中学レベルで不要な項目
図形の性質と証明、資料の活用・確率の基礎の一部、作図
中学レベルで必須な項目
文字式の計算と展開・因数分解、一次関数と二次関数、三平方の定理、連立方程式
AI数学のための高校基礎レベル数学
高校数学Iの内容を固めます。二次関数グラフ、最大・最小、三角比(sin, cos, tan)の定義、平方完成までをやります。
この時点でPythonを使ったグラフを書いてみてもいいでしょう。
ここではPythonを便利な電卓として使うレベルのことをやるだけです。Pythonでプログラミングというと難しく感じると思いますが、Google Colabにアクセスすればすぐに使えます。
ここで基本的な使い方、比較的簡単な数式の計算、グラフの書き方を学びましょう。
本格的な数学に入るため基礎をしっかり固めるためにも、2ヶ月から3ヶ月の学習を想定します。
平方完成が出来ればAIで重要な誤差最小化の考えにつながります。
二次関数など高校数学IIを学習します。
指数法則、対数(log)の定義、シグマ記号などを理解して基本的な計算が問題ないようにします。
この時点で出来ない場合は前の項目に戻って学習し直してください。
この段階までが3ヶ月でできるようになっていることが目標です。既にある程度理解している場合はもっと短く終了できているかもしれません。
AI数学のための高校レベル数学
数学B/Cのベクトルの内容を学習し、数II・IIIの基礎を学習します。
微分・積分を中心に、接線の傾き、微分の公式、合成関数の微分、連鎖律を中心に学習します。ベクトルは内積について理解する事が重要です。
なお、現在の高校数学では行列を扱わないことが多いため、大学数学で初学として学ぶことになります。
連鎖律(合成関数の微分)を学習すれば、AIのバックプロパゲーション(誤差逆伝播法)が理解出来ます。
この項目は2ヶ月から3ヶ月。中学レベルからの復習を含めて、ここまでを半年程度で終わらせることを目標にします。
ここまでが基礎として重要なので、どこかでつまづいている、理解が不足していると思ったらしっかり復習しましょう。
ここまでをしっかり学習することがその後の学習につながります。
この時点でのプログラミングのレベルによりますが、Pythonで数式を電卓代わりに使えるような学習は必須の段階に入っています。
高校レベルに入ってから基礎は出来ている状態の場合もあるでしょうか、必ず高校レベルを学習した後はPythonでの計算をできるようにしましょう。
これはズルではなく、この後のよりややこしくなる学習をスムーズにすすめるためです。既に書いているとおり、手計算を正確にできることが目標ではありません。便利なツールは適時使いますが、数学的な概念の学習を飛ばしてしまうほどの便利機能は使わないでください。
この学習期間は、長くても1ヶ月程度、数週間程度でPythonのNumPyの基礎的な使い方学びます。今まで学習した内容をPythonで計算出来るようにすることはこれまでの復習になります。
本格的なPythonプログラミングの学習は不要です。
この時点では、あくまでもPythonはややこしい計算が便利にできる電卓です。
学習を始めて約半年の段階で、Pythonを数式を便利に計算できることがわかるだけでもモチベーション維持には役立つと思います。もしも興味と時間があれば大学レベルの数学を終わった後に終わらせるDeep Learningを見よう見まねで先取りしてみるのもいいでしょう。
今は全く意味がわからない事を実感出来ると思います。大学レベルの数学を学習した後には、かなり違う感想を持つことを実感できるかもしれません。
高校レベルで不要な項目
図形の性質(幾何)、複素数平面
高校レベルで必要な項目
数と式・2次関数、微分法・積分法、指数関数・対数関数、データの分析
ベクトル、行列、数列、極限・微分・積分、統計的な推測
整数の性質(あとでつかうプログラミング関係で役立つ)
AI数学のための大学レベル数学
大学レベルは各項目を2ヶ月前後で学習することを推定しています。
もしもさっぱり歯が立たない、よくわからない状態なら、高校レベルに戻ることも重要です。
線形代数の学習をします。
特に行列の積、逆行列、行列式、固有値・固有ベクトルを理解しますが、概念が抽象的で分かりにくくなっているかもしれません。行列式については概念を理解すれば問題ないです。
その後、多変数関数と偏微分の内容に入ります。
偏微分、勾配を中心に学習します。
確率・統計を学習して、一通りの数学の分野の学習を終了します。
確率分布、正規分布、期待値、分散、ベイズの定理を学習します。
大学レベルの数学の学習は半年程度かけますが、終わったらAI関連の数学関連で学習して、自分の理解を確認します。
わからなければ勇気を持って戻って復習
もしも、AI関連書籍の数式の意味などがわからない場合は、その前の項目に戻って学習し直しましょう。戻らずにあえて先に進んでいくという方法もあります。
その上で、ある時に戻って確認してみるとその時は気づかなかった概念などに気づいていることもあります。このあたりはメリハリをつけて柔軟に対応しましょう。
ここまでで全くわからない状態ではなく、理解が不足しているのでイマイチピンとこないような状態になっていると思います。
それでもわからない部分が出てくると思います。
既に先人が同じようにどこかでつまづいているので、関連のブログ、YouTubeの解説動画などを確認します。特に重要なのが数式に実際に数字を入れて計算してみることです。
AI関連の数学の内容は教科書的に書かれているわけでもないので、理解しにくい場合もあります。AIに聞く事も有効かもしれません。
これを繰り返していけば、数学関連の理解には問題なくなっていると思います。
もしもわからない場合は、何かの理解が欠けている状態かもしれません、AIを「使うだけ」で終わらせないために ― 数学ゼロから始めるAI理解ロードマップの補足解説を参照してみてください。
Pythonの学習も並行する
最終的にPythonを使ってAIのコードを書くことになるので、数式もPythonで書けるようにPythonの学習も並行すると効率が高いです。
前述したように高校レベルの学習が終わったら高校レベルの数学の学習内容を、Pythonで計算できるレベルまで学習します。長くて1ヶ月程度でしょうか。
Pythonのライブラリ、NumPyとMatplotlibを使うとグラフを書けますが、NumPyとMatplotlibを使ってグラフを書くコードをAIに書いてもらうような事も学習に役立ちます。
例えば、NumPyの配列は数学的にはベクトルや行列に対応しているため、線形代数の理解がそのままコードの理解につながります。
プログラミング自体の初心者の場合は、Pythonの基本を並行して基本を学習しましょう。
この時点で重要なのは細かなコードを自分で書けるようにすることではなく、Pythonで出力された基本的なコードの意味がわかることです。
例えば二次関数のグラフを書くPythonコードはそこまで難しくないので、すべてのコードを自分では書けないかもしれませんが、AIで出力されたコードの意味は初めてプログラミングを学習しても、短期間ですべての行の意味は理解できると思います。
この行の意味は理解できるとは、その行が何をする物なのかをみてわかるという意味です。
更にその先への展望
高校基礎レベルが終わった段階、もしくは数学の内容を一通り理解した段階で、コンピュータサイエンスの学習も並行すると、より様々な理解が深まります。
特にアルゴリズムとデータ構造、データベースあたりを理解すると、AI関連で役立ちます。コンピュータサイエンスではCPUなども学習しますが、アルゴリズムなどの必要な内容に絞って学習することで、学習時間を最適化出来ます。大学などでは2年くらいかけて行う内容を、一部分だけを半年ほどで学習します。
まずは基礎を固めるという意味で、AIを使うための数学、AIを使うためのPython基礎、それらの基礎となるアルゴリズムなどの学習に目安として1年半くらいかけます。
このレベルまで来ると、コードが数学的に何の意味がある物か、論文を読んでコードは書けなくても、どのパラメータがどんな意味があるのかは理解できる状態になり、知識だけで言えばAI関連の技術者としては中の下くらいにはなっています。実際の理解度にもよりますが、それよりも上のレベルに位置している場合もあります。
あとは経験を積んでいくだけです。
実際に数学、特に線形代数、確率統計などを理解せずにコードと数学が一致しない、AIをブラックボックスとしてAPIを使っているだけの自称AIエンジニアは多数いるのが現状です。
そのようなエンジニアに比べて、数学の理解は深いが経験が浅いエンジニアは長期的に見ると、有用な人材として生き残っていき、貴重な人材であり続ける可能性が高いです。
コンピュータサイエンスの学習をどうするかはともかく、一通り大学レベルの数学までをどう学んでいくか、学習した後にどうするかなどは、AIを「使うだけ」で終わらせないために ― 数学ゼロから始めるAI理解ロードマップの補足解説を参照してみてください。
コンピュータサイエンスに行かないで科学技術計算へいく道
コンピュータサイエンスの学習をすれば、よりコンピュータがどう計算しているのかという、コンピュータの基礎を学べます。
しかし、コンピュータの基礎はそこまで興味ない人も多いでしょう。
より今使える内容を学習したい場合は科学技術計算を学ぶという方法です。例えば物理シミュレーションができるとか、ロボットの制御、構造解析などのことです。
大学の基礎レベルまでの数学は前半まではAIでも科学技術計算でも同じです。
AIの基礎を学んだ後でも、AIは学ばずに科学技術計算向けにすることも、両方を学習する事も解説しています。
英語も出来た方がいい
CEFRという指標ではB2、わかりやすい所では英検準1級程度、TOEIC 800点程度(リーディングで400点台)あれば、欧米の学習コンテンツが専門用語を学習すれば利用できるようになります。
特に大学レベルの学習に入ったら、欧米の大学生向け教材などを併用できるようになります。多くの大学が、様々な学習コンテンツを無料公開しており、動画授業も利用出来ます。
英語4技能の中で、まず必要になるのは英文読解のリーディングです。人によっては最もはやく到達できるかもしれません。
その上でリスニングが出来れば動画の授業も活用できるようになります。
そこまで目指す場合は、まずは中学レベルの単語、文法から始めて見ましょう。
数学を1日2時間程度学習しながら、多少のプログラミングも始めることを推奨しているので、英語の学習を更に追加するのは負荷が高すぎるかもしれません。余裕があるならやってみてください。
2026年にAIや数学の学習を始めるのはちょうどいいタイミング
このブログ記事は2026年から学習する人向けに公開しました。
大人がよく言うのは、若いときにもっと勉強しておけば良かったということです。
現在のAIブームのブレークスルーとなったのが2012年のAlexNetだと言われています。この時にこれからはAIだと気づいて、それには数学などを勉強しないとわからないと気づいたとしましょう。
もし、あなたが2013年にゼロから学習を始めていたらどうなっていたでしょうか。
ここで書いていることを1年では無く2年かけてとりあえず大学数学レベルまですすめたとします。
おそらく、この時に独学していた方はほぼ必ず大学数学で壁に当たり、AI関連の論文の数式の意味も理解できない状態になるでしょう。
なぜ2026年がちょうどいいタイミングなのか
この学習では「ゼロから作るDeep Learning」という書籍をAI理解の最終目標としています。
この書籍が出版されたのは2016年です。
Pythonを電卓代わりに使うNumPyが本格的に使われるようになっていったのは2010年頃です。このPythonを簡単に使えるGoogle Colabが公開されたのは2017年です。
他に似たようなサービスは2016年頃から増え、以前から似たようなサービスはありますが、2013年現在はパソコンへのインストールが必要で利用自体は出来ましたが、気軽に使える環境とは言いづらかったです。
つまり、Pythonで数値をいじりながら、数学の勉強をスムーズにすることは出来たが、今ほど快適ではありませんでした。
機械学習やディープラーニング関連書籍はいくつか出ていましたが、このロードマップなら高校卒業レベルの学習を終えた人を対象とするような人向けの物としては「やさしく学ぶ 機械学習を理解するための数学のきほん」が2017年に出版されています。
その後増えていますが、これ以前は数学の知識がある人を前提にした書籍が中心で、参考にすべき情報が少ない状態でした。
ちょうどこの頃からYouTubeなど含めて様々な教育コンテンツが増えてきましたが、当時はそこまで多いとは言えませんでした。
また、翻訳サービスの充実もあります。
日本語の情報元が少なければ英語の情報を確認すればいいですが、多くの日本人にはその英語の読解問題があります。これは最新の翻訳サービスで解決します。
何よりも2022年に登場したChatGPTなどのチャットボットの登場は、独学の学習には良い教師になっています。
特に2025年のChatGPT、Geminiなどの進化は素晴らしく、使い方によりますが人間の教師が不要なくらいに学習のアドバイスをしてもらえます。
もっと早くからAI関連の学習をしておけばと思っても、おおむね2020年以前は学習環境がそろっていなかった状態です。仮に学習しても様々部分で壁にぶち当たっていたと思います。
その後、学習環境は整ってきましたが、わからない事を気軽に聞けない状態でした。
今ならAIに聞けば一瞬で解決することでも、当時は解決方法すらわからず途方に暮れていたでしょう。
特に数学関連の学習、抽象的な内容はAIにはいつでも気軽に聞けます。人間に聞くならそんな人をどうやって探したらいいのかわからないし、聞くにしてもあまりにも基本的な事をしつこく聞いたら相手も迷惑でしょう。
そのような環境が2026年にはそろっています。おそらくこの後も続々と役立つコンテンツが公開されていくと思います。この後の方が学習はしやすくなるでしょうが、2026年現在も問題なく学習出来るようになっています。