ネットワーク配信の問題点

動画のインターネット配信が、Blu-rayを置き換えるかどうかは別にして、今以上に普及するのは確実だろう。
その時に問題になるのが、ネットワーク速度などインフラだ。

家庭内でギガビットイーサーや、IEEE802.11nベースの無線LANなどのネットワークが構築されていれば、録画した番組などを各端末に配信するのに当面問題はなさそうだが、外部から配信される動画の場合、そうはいかない。

例えば、Blu-rayに入っているMPEG2のフルHD動画の場合、30Mbps以上の場合もあり、2時間程度の映画で20GB程度の容量は必要になる。
現在、FTTHの環境でも1GB程度あるXbox 360やPS3のゲーム体験版をダウンロードするのに10分以上。LinuxなどのISOイメージの場合、DVD用に4GB程度あると1時間はかかる。
ネットワーク配信の場合、MPEG2にこだわる必要はなく、MPEG4-AVC/H.264にしたとしても容量が10GB程度はあると、すべてダウンロードするのに、現在最高の環境でも数時間はかかりそうだ。FTTHがある程度普及している日本ならまだしも、ADSL程度の海外ではストリーミングは無理だろうし、ダウンロードに数日かかってしまう場合もありそうだ。

その場合、今この映画をみようと思っても、見れるのは早くても数時間後、悪ければ数日後になる。ストリーミングの場合、いつ止まってしまうかもわからない状況では映画は楽しめないだろう。
うまく運用して、例えば配信開始日や、視聴希望日までに事前にデータを自動的にダウンロードしておき、視聴時に認証キーだけを解除するようなことも必要になりそうだ。

とりあえず、フルHDではなく720p程度で妥協するというのもありだろうが、その場合、放送などより品質の劣る面倒くさいネットワーク配信サービスを、誰が使いたいのかというのもありそうだ。

また、映画等の場合、そこそこの大作なら配信開始日に全世界で少なくとも数万から数十万人が一斉にアクセスするだろうが、サーバーを各地で分散したとしても、それに耐えられる物が構築が出来るのかどうかはよくわからない。
おそらく大抵のネットワークエンジニアは無理と答えるだろう。

コレクターアイテムとしても物理的なメディアは残るだろうが、物理的なメディアなら、何らかの手段で入手すればいつでも見れるのと異なるネットワーク配信が、インフラも含めどうなっていくのか楽しみなところ。

これ以外にも運用方法など問題は山積みだ。
現在、音楽配信はDRMが消えようとしており、どこでダウンロード購入してもコーディックなどに対応していれば、どんな端末でも聞けるが、動画ではどうなるのか。例えばiTunesで動画を管理するにしても、数年前までの音楽ファイルと同じように、iTunesに対応した物でなければ視聴できないのは使い勝手が悪い。

20年程前は単なる画像を送るのにかなりの時間がかかっていたが、今では画像は一瞬だし、5分程度の音楽ファイルも24bit/96kHzなどのロスレスでもなければ、秒単位でダウンロードできる。10年後には、フルHDの動画も数分。4Kなどの動画配信をどうするかという状況になっていれば、ネットワーク配信もかなり普及していることだろう。

そこまでの道のりは険しいが、運用方法も含め、消費者に使いやすい動画配信サービスが登場することを期待したい。