日本でペットボトルの再利用はほぼ実現不可能

環境省がペットボトル(PETボトル)の再利用(リユース)を検討するそうだ。

環境省、ペットボトル再使用を検討へ TBS
ペットボトル再使用を検討 環境省が研究会 asahi.com
ペットボトル再使用を研究・環境省 NIKKEI NET
デポジット:ペットボトルに上乗せ再使用へ 環境省検討 毎日.jp

趣旨としては、ゴミとして出ているペットボトルを減らすため、ペットボトル飲料自体にデポジットをつけて販売。
使用後のボトルを回収、洗浄し、飲料容器として再利用するというもの。
これが、可能かどうかを各業界代表者らで会合を開き、年内に報告書をまとめ、この制度自体3年以内の導入を目指しているという。

ようするに、ビールびんのように、リサイクルしたいと言うことなのだろうが、技術的には現時点でも可能だが、飲料の品種が多く、求められる品質も世界一の日本では、実現はほぼ不可能な制度であるといえる。

まず、日本では炭酸飲料やミネラルウォーター、緑茶、ウーロン茶、微炭酸、果汁入り飲料などさまざまな飲料が販売されている。
海外に行ったことのある人は知っていると思うが、日本のように自動販売機はないし、多種多様な飲料は販売されていない。

また、飲料の品種により飲料容器自体も異なり、容器自体の種類が多種多様となっている。

見た目でわかりやすいのは、コーラなど炭酸飲料と、ミネラルウォーターだ。これは形状も異なれば、厚みも異なる。

他に見た目でよくわかる違いは、一部の水系飲料にもあるが、ほぼ日本独自のお茶系飲料などで使われている口の部分が白いもの。
この白いのは、色をつけているわけではなく、原料を口の形状にした後、この部分だけ加熱して、専門用語で言うところの樹脂(PET)の結晶状態を変化させているのである。

口部の部分が白くなると、より堅くなり、熱に強くなる。このため、飲料を容器に入れた後の加熱殺菌が出来るようになる。
つまり、口の部分が白い飲料は、飲料を入れた後に加熱殺菌をしている。
口の部分が透明なのは殺菌をしていないわけではなく、無菌充填をしているため殺菌が不要なのである。

他にも、飲料メーカー、品種毎に容器の形も異なるが、見た目でわかる範囲でも、さまざまな種類があることがわかるだろう。

さらに、ここ数年、コンビニや自動販売機でも増えている、ホット販売用のペットボトル容器は、コールド販売用とは異なる容器が使われていることがある。

お茶は、熱をかけると空気中の酸素などと反応し品質が低下する。ペットボトルは酸素を透過しやすいので、一部のお茶系飲料では酸素を透過しづらい容器を使用している。
この容器は、通常のペットボトルの内面をコーティング(内側が若干茶色い)するなど容器メーカーによりアプローチは異なるが、見た目で同じでも実は違うというものも増えている。
さらに言えば、自動販売機用の黄色いキャップの容器と、オレンジキャップの容器も異なるが、説明が複雑になるので省略する。

内面をコーティングしたものなどは、見た目にわかりづらく、品種分けするのは困難だが、形が異なるものを検査機により自動で選別すること自体は現時点でも可能。

機械的に選別することは可能になるが、回収した容器を選別して、メーカーや品種毎に工場に戻すというのは現実的ではない。この制度が開始される場合、容器のデザインをビールびんのように統一する必要があるだろう。しかし、前述したように品種を多くする必要があり、どうしても選別という手順は省けない。

容器自体、潰れないようにするため、厚みも厚くしなければならない。500mlの容器が30gから50g前後なので、これが倍になったとしても100g程度になるだけで重さ自体はたいしたことはないが、つぶせなくなるため、容器の搬送は、ほとんど空気を運ぶようなことになる。

このような物流の無駄を避けるため、ペットボトル容器は容器専業メーカーから購入するのはなく、大手飲料メーカーではペットボトル容器を飲料工場内で製造するようになっている。
これらの経営努力があり、500mlなどの清涼飲料は150円程度という価格が維持されている。500mlの飲料が150円とすると、容器のコストは数年前まで1から2割程度だった。最近は原油価格が高騰しているため、3割以上になっている可能性もあるが、それでも数十円である。

この数十円で製造できるものを、回収し、洗浄、選別などのコストをかけることが本当に環境によいのか、しっかりと検討する必要があるだろう。

もしも実現した場合、現在と同じ容器と、リサイクル品の容器の2種類の飲料が流通するようになるだろうが、よりコストが高いリサイクル品を選ぶ消費者がどれだけ出てくるのかというのも興味深いところではある。世界一品質に厳しく、品種も多い日本でこのような制度が実現したとしても、普及はかなり難しく、日本人の意識が変わらなくなり、清涼飲料企業の成長などを無視しない限り、実現はほぼ不可能な制度であるといえる。

環境省としては、環境問題のためにこのようなことをしましたよアピールの1つなのかもしれないが、500mlの飲料の多くは、ラベルが全面を覆っている。いきなりリユースなどの難しいことではなく、無駄以外の何物でもない全面ラベルを止めさせるような簡単なことから始めた方がいいだろう。

環境省

ちなみに、全面ラベルは光から保護しているとか言うメーカーもあるが、500mlでは保護して1リットルや1.5リットルでは保護しないという矛盾があるという点も一応指摘しておきたい。

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