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Kindle 3は文字を読む最強端末(2010年8月現在)

iPadが登場したとき、ハードウェアはともかく、ソフトウェア面などを総合的に見て、他社がこれに追いつくのはかなり厳しいと感じたが、Kindle 3も同じ感じをいだかせる。

Kindleが登場する前の電子インクデバイスはいろいろみたし、カラーの電子ペーパーも各社の開発中品を含めいろいろとみてきた。販売されている物も、Kindle 2やB&Nのnookは所有して愛用していたし、CES 2010でお披露目された様々な端末も実機をみてきた。
そのどれも、2010年8月に発売されたKindle 3にはかなわない。もちろん、Kindle DXの様な表示部がそもそも大きいデバイスや、iPadのような液晶を採用したデバイスは別の利点があるので、同軸に語ることは出来ない。あくまでも、小説など文字を中心とした読み物用デバイスとして最高だと言うことだ。

Kindle 2もそこそこ完成されていたが、Amazonは小説や実用書など文字が主体の文章を読む端末として、さらに完成度を高めた他社を引き離してしまったのがKindle 3だ。

Kindleは電子インクを採用し、バッテリ駆動時間が長く、直射日光下で使用できるという利点がある。もちろん、電子インクデバイスは、今後も書き換え速度やコントラスト、カラー対応などさまざな改良がなされるだろうが、これらの性能が現在の液晶並みになるのは当分先だろう。液晶も1990年代前半までは白黒が主流で小さく高価なディスプレイだった。
これらの性能が成熟すれば、将来のKindleなどに採用されるのだろうが、年単位で時間がかかるため、それまではKindle 3や将来の機種を選んでも全く問題ない。

現時点で、価格、サイズと重さ、バッテリ駆動時間などのバランスを考えると、Kindle 3は文字を読むデバイスとして、非常にバランスとれたハードウェアだ。

$139からという価格設定は決して安くはない物の、多読家にとって、Kindleで本を安く買えるのなら、非常にお得な設定だ。そうでない方には安くはないが、この手のデバイスで1.5万円を切っているのは、あまり興味のない方でも手を出しやすい価格だろう。

重さは約241gで最近の携帯電話の2倍程度だが、サイズの関係もあり非常に軽く感じる。長時間持っていても疲れない重さだ。たまたまなのか意識的なのか、iPadの半分というサイズも気軽に持ち運べるサイズで、厚みも薄い。鞄の中に文庫本数冊入れるのなら、これを1台入れていた方がよっぽど役に立つ。ハードカバーは比べる対象にもならない。

従来モデルと比較し、比べなければよくわからない程度だが、コントラスト比が向上し、書き換え速度も向上している。この性能は10年後の製品と比べると、かなり劣った物なのだろうが、現時点で文字を読むのに不都合はない性能は備えている。

なにより、Kindleで購入できる電子書籍が順調に増えているのが素晴らしい。
Kindle 3で多言語対応したので、英語圏以外の様々な言語で多様な電子書籍が入手できるようになるのだろう。
日本語対応は当分遅れるのだろうが、それまで使うPDFリーダーとしてみても過去最高のデバイスといえるだろう。

Kindle 3 のレビュー記事

Amazon.comはKindle 3の販売に先立ち、いくつかのTech系サイトにKindle 3を貸し出していたようで、そのレビューがいくつか出ている。

PC Magazine
Fast Company
Wired
CNET
PC Wolrd
ZDNet
Kindle Nation Daily
CrunchGear

これらの情報によると、改良されたディスプレイも、WebKitベースのブラウザも、Amazon.com純正カバーもおおむね好評のようだ。

日本人や英語圏以外の人が気になる各言語の対応だが、これらのレビューでは一切触れられていなかった。
CNETのレビューは動画付なので、Kindleのような電子インクデバイスを見たことない人も新型機の表示がどんなものか理解しやすいだろう。

ということで、日本語がどんな感じなのかは、発売されて日本に届くまでお預けと言うことになるのだろうか。

電子ブックの配信はどうなる。デバイスや配信業者、フォーマットとか

電子ブックデバイスとして、KindleとiPadしか話題にしない人も多い。
デバイス自体はアマゾン(Amazon)に加えて、ソニーやB&Nも出しているが、2010年にはさらに数十社がこの市場に向けた製品を公開する。
配信業者も多く、他にも様々な問題もある。KindleとiPadしか見ていないような意見はかなり分析が甘い。

http://www.youtube.com/view_play_list?p=67BB16E6FEB8AE79
さまざまな電子ブックリーダー

電子書籍を読むだけなら、PCの画面でもいいし、携帯電話でもいいし、専用リーダーでもいい。
文字をじっくり読む場合、本のように手に持って扱えるデバイスが適しているだろうし、ビジュアル指向の雑誌を読むなら、さらに、書き換え速度が速いデバイスとインターフェースが必要になるだろう。

そういう意味では、小説などはバッテリ駆動時間も長く、目に優しい電子インクを使ったKindleのようなデバイスが適している。カラーの画像やビデオなども含めて、タッチパネルインターフェースを使ったiPadのようなデバイスは、雑誌的なコンテンツに適している。
KindleやiPadのようなデバイスは、2010年から電子ブックが読める物として話題になるだろう。

しかし、それぞれ利点も欠点もあり、両者はディスプレイテクノロジが発達するまでは共存する。電子インクの発色と書き換え速度に加えてコストが液晶に近づいた頃には、また新たなデバイスとなっているだろう。

電子ブックを音楽配信と重ねる意見も多いが、音楽と書籍は全く違う。
音楽の場合、音をオーディオデバイスで出力出来ればいいので、有料・無料、ネットのダウンロード、CDやレコードなどの違いは全く関係なく、電子的な配信、販売に適している。
しかし、本の場合、文字や画像を表示して読まなければならないが、それを読むためのデバイスをどうするのかなど、簡単ではない。

音楽の場合は、無法地帯から、アップルのiTunesが始めるまでは、有料で電子的に買える物が皆無と言っていい状態だった。
iTunesが成功したことで、電子的な配信・販売に向いている音楽は、Amazonやソニーなど、いくつかのサイトも電子販売に参入し、CDなどの販売は縮小する一方だ。日本なら携帯電話での販売もそれなりに好調のようだ。

しかし、電子ブックの場合、そもそも無法地帯とはなっていないし、紙に印刷して製本された物は優れており、音楽CDのようには市場は縮小しないだろう。
電子配信に関しては、Amazon Kindleに代表されるように、有料販売が現時点で主流と言っていいだろう。
その電子配信は、Kindleに加えて、ソニーやMobipocket、B&Nなど様々な業者がすでに有料販売を始めている。将来は少ない何社かがかなりのシェアを得ると思われるが、まだまだ市場自体が小さく、参入業者も多いので、どうなるかはまったくわからない。

Amazon Kindle http://www.amazon.com/

Sony Reader Store http://ebookstore.sony.com/

Apple Store http://www.apple.com/

Barns & Noble nook http://www.barnesandnoble.com/

Mobipocket http://www.mobipocket.com/

O’Reilly http://oreilly.com/

Google Books http://books.google.com/

唯一、書籍で無法地帯と言えるのが、日本の漫画(Manga)だ。
日本の漫画は、海外でも人気だが、日本で雑誌や単行本となって出版された物は、勝手にスキャンされ、各国語に翻訳され、オンラインで読むというのがかなり 浸透している。

個人的に目撃したのは、BLEACH(ブリーチ)という漫画などを、アメリカの小学生がネットで読んでいたし、ドバイの小売 店では、20台の店員がNARUTO -ナルト- をレジのコンピューターで読んでいた。

小説や雑誌などとは違い、漫画自体は電子配信の敷 居がかなり低いコンテンツと思われるが、権利者がこれに向けて動いていない。

Kindleは3G回線を基本としており、 画像の漫画ではデータ量が多くなり通信料の問題がある。日本の携帯電話向けには専用にオーサーリングしたもので参入しているようだが、漫画家の中には電子 化した際にはカラーで表現したい方も多いようなので、カラーの液晶を使ったデバイスでの配信が、漫画の基本になるのかもしれない。

また、フォーマットが多いのも問題だろう。

音楽の場合、mp3が基本で他に数種類あるだけだったが、Kindleはmobipocketベースだが、業界団体はePubを推進しているようだ。PDFもあるし、日本などの縦書きはどうなるのか気になる点も多い。

最終的に、これはソフトウェアの問題なので、デバイス自体がそれぞれのフォーマットに対応すればいいだけだが、フォーマットがたくさんあるのはユーザーにとって利便性がよいとは言えない。

そもそも、日本では用語も統一されていない、電子ブック、電子書籍、イーブックなどたくさんあり、この用語の認識も人によって違うようだ。

様々な問題はあるが、2010年は電子ブックが本格的に立ち上がるのは確実だ。

Amazon Kindleで日本語表示する方法

Kindleで日本語を読む方法

Kindleは現在の所、正式に日本語化されていませんが、いろいろやれば日本語ファイルの表示が可能で、十分な品質であることがわかりました。

Amazon Kindleで日本語表示研究 その1
Amazon Kindleで日本語表示研究 その2 – 本のスキャンを考える
Amazon Kindleで日本語表示研究 その3 – 一般的なPDFの表示
Amazon Kindleで日本語表示研究 その4 – 本をスキャンする
Amazon Kindleで日本語表示研究 その5 – 青空文庫
Amazon Kindleで日本語表示研究 その6 – スキャンした本がどれだけ読めるか?
Amazon Kindleで日本語表示研究 その7 – スキャンの手間は

以上の研究結果をPDFにまとめてみました。
Kindle自体で読みやすいサイズにしています。

Kindleで日本語を読む方法 PDFファイル(約300KB) HowToReadJapaneseByKindle20091226.pdf

主な目次
Kindle とは
Kindle が日本語を表示できないわけ
Kindle で日本語を表示する方法
Kindle が表示できる形式は
Kindle 用の画像入りPDF を作成する方法
PDF ファイルに日本語フォントを埋め込む方法
Kindle に日本語を覚えさせる
応用編
青空文庫
本をスキャンしてPDF 化する
本をスキャンしてPDF 化する方法
スキャンに必要な道具
本の解体方法
スキャン時の注意点
本の解体に踏襲してしまう方へ
スキャン後のKindle 用補正
Kindle にファイルを送る方法
Kindle 用に向いてない書籍

ライセンスはCreative Commons (CC)

Amazon Kindleで日本語表示研究 その7 – スキャンの手間は

KindleがPDFに対応し、青空文庫が簡単に読めようになった事で喜んでいる方がいるが、本当にそれだけでうれしいのだろうか?
もちろん、それも良いことは確かだが、Amazon.comのKindle Storeで販売されているような新刊などを、日本語で読みたいというのが本音だとは思う。

青空文庫で入力などの作業をしている方々は頑張っている物の、古い本なら何でもあるわけではない。
例えば、ニコラス・ゴーゴリの外套は青空文庫にあっても、ドストエフスキーの罪と罰はない。
一方、Project Gutenbergに外套は無いが、罪と罰(英語版)はある。

日本語の罪と罰など、古い本でも青空文庫に登録されていない物を読むには紙の本を入手するしかない。
その紙の本を紙のまま読むのもいいが、せっかくKindleがあり、スキャンしてPDF化したものは十分読めるのだからKindleで読んでしまえばいい。
しかし、スキャンする手間や時間がどうなのかが気になるところ。

時間と手間がかかりすぎるのなら、スキャンするよりも直接読んでしまった方が速いかもしれない。
ということで、1冊あたりのカット(裁断)、スキャン時間がどれくらいになるか検討してみた。

ScanSnapは解像度や紙サイズにもよるが、A4の書類を300dpiで読み取る場合、1分あたり20枚のスキャンが可能。
つまり、400ページの書籍なら、200枚の紙があるので10分かかるということになる。
これは最低時間で、これに書籍をカット・解体する手間がかかる。


課題図書 村上龍 半島を出よ (上)


課題図書 高杉良 生命燃ゆ (新潮文庫)

カットは裁断機を使う場合も、厚みがある書籍の場合、裁断機に入るように加工する必要がある。裁断機を使わないなら、カッターナイフなどで切るしかない。
カッターで切るのは手間がかかりそうだが、実際にやってみると、多少時間はかかる物の良く切れるカッターを使えばたいした手間ではない。

時間がかかると言っても、スキャン時間が最低10分くらいので、カット時間はスキャンよりも短いかもしれない。
カット中にスキャンすれば、スキャン中にカット作業自体はほぼ終わると思われる。
例外は、カットに手間がかかるハードカバーで厚みがすごい場合。これも切り方に慣れればあまり問題はないが、初めは多少手こずるかもしれない。
また、製本がうまくいってないのか、接着に使った糊がかなりはみ出ている物。
これはカットしても糊の部分を探して剥がさなければならない。重ねてスキャンしてしまった物を修正する手間を考えると、初めからしっかりと確認しておくのがおすすめ。

あくまでもScanSnapの設定だが、傾き補正や書類の向き(縦とか横とか)の補正は切って置いた方が良い。漫画はかなりの確率でこの判定に失敗する。
小説などの挿絵等も失敗する可能性がある。切り方を失敗していなければ、傾き補正もほとんどすることなくスキャン可能。
また、白紙ページの自動削除も、あとでページ数とスキャン枚数を確認する際に戸惑う元なのでやらないでも良いと思う。

カッターでカットし、それぞれのページを分離する時間はページ数などにもよるが、1冊あたり10分前後。スキャン後の確認などを含めても15分かからない程度だ。
これなら1日1時間、4冊スキャンすると言うことを1ヶ月続ければ、100冊以上のスキャンが可能。
CDのリッピングなどに比べ手間はかかるが、読む時間に比べて時間がかかりすぎると言うことはないと思う。
なによりも、デジタル化すれば、埋もれた本の再活用も簡単になるわけで、一度始めると意味もなく保存していた本を全てデジタル化したくなってくる。

期間限定公開。無短縮版


つづく